アーム式?岩瀬投手のキレのある投球の秘密
2007年、中日ドラゴンズが日本シリーズ優勝を果たしました。ドラゴンズの強みはなんといっても絶対的守護神の岩瀬仁紀投手がいることです。今シーズンも43セーブを上げて中日の勝利の方程式になっています。140kmのストレートとスライダーが持ち味のピッチャーです。プロ野球では140kmのストレートは速いほうとはいえません。ですがこのストレートにバッターはつまって凡打をしたり、スライダーに空振りをしたりします。なぜだか打てないピッチャーの一人に岩瀬投手がいるのではないでしょうか?
岩瀬投手のフォームは大きく円を描くように腕を振り下げ、スリークォーター気味に腕を振ります。ちょっと見るとなんのへんてつもないアーム式の投げ方に見えるのではないでしょうか。キレがよいというのも違うような気がします。なぜかバッターから見えにくく打ちにくいボールなのです。今回は岩瀬投手の投球の方法を説明しようと思います。
バッターはピッチャーが投げたボールをコンマ数秒の間に打つのか打たないのかを判断して動きます。バッターはピッチャーの動き、リズム感、ボールが放たれた場所などを見て判断しています。一番のポイントはピッチャーが力を入れた瞬間をとらえて自分に向かってくるボールのスピードを計算して打っています。ボクシングではパンチを力みながら打つことを「テレホンパンチ」といいます。パンチを打つ予備動作が相手に察知されてしまい、パンチを打つ前に打つぞと電話をしているようなものだということです。大きく反動をつけたり力みながらパンチを打ったりすると相手に動きを読まれて避けられてしまうのです。
バッターが打ちにくいピッチャーは、力を入れた瞬間がわかりづらいのです。この力を入れた瞬間がとらえにくい力の出し方のポイントはスムーズということです。力みが強い時に特にわかるのですが人間は力を入れた瞬間、一瞬止まるのです。動きが止まるからそこで力を入れたということがわかります。
ジャイアンツの高橋尚成投手は次のように発言しています。「興奮してマウンドに上がると球速は出る。実際145〜6kmのボールを投げたけど打たれちゃう」「135kmでいい。制球力やキレを磨き、決して力まないようにしたい」力むと動きが止まってしまいます。スピードは出てもバッターに力を入れた瞬間を教えてしまうことになるのです。
ところでヘビの動きを見たことがありますか。流れるようにスムーズで、いつのまにか近づいてくるように見えます。それと同じで岩瀬投手の腕の振りはアーム式に見えても大変スムーズでバッターから力を入れた瞬間を捉えにくいのです。私には岩瀬投手の投げる腕の動きはボールの振り下げからリリース、フォロースルーにかけてたいへんスムーズで速く見えます。岩瀬投手の場合、投げる腕の動きは腕の内旋、外旋の動きを伴っています。(写真1)
 |
(写真1-クリックで見る事ができます。) |
この内旋、外旋の腕の振りは肩のインナーマッスルや背中側の筋肉を働かせ大きな筋力を発揮します。(図1)
 |
(図1-クリックで見る事ができます。) |
通常のアーム式の場合は肩関節を支点として腕が動いており腕の内旋、外旋の動きがありません。(写真2)
 |
(写真2-クリックで見る事ができます。) |
この場合一連の投げる腕に力が入りっぱなしになりバッターにはたいへんわかりやすい腕の振りなのです。アンダースローの投げ方もアーム式に見えると思いますが一流投手は背中側の筋肉を使った腕の腕の内旋、外旋の動きを使って投げています。(写真3)
 |
(写真3-クリックで見る事ができます。) |
これらの動きには肩甲骨や体幹部の柔軟性や強さが必要です。「インナーマッスルストレッチ&体幹体操」などで自由に動ける体をつくって、しなやかで強い腕の振りを身につけて下さい。 |